2024年10月

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もともと奥さんが海外に住みたいということで、オーストラリアに一年住みました。

テレビや新聞の情報が一切ない中で、いったい自分が何をしたいのかということを考えた時に、色んな記憶が蘇ってきたんです。自分が好きだったこととか、字を書くことだったり、絵を描くことだったり…。

どうしたらそれができるんだろう?と思って、道端に座って字を書いてみようと思いました。

一週間ぐらいやろうかやるまいか葛藤があって。でも恥ずかしいけどやってみたいというのがあり、やってみたんです。始めてみたら、結構興味を示してくれて書いたものに対して喜んでくれてる。それが嬉しかったという記憶のあるまま日本に帰国しました。

何か、自分の好きなことが仕事に結びつくんじゃないかという感覚がありましたね。

島根に帰ってから、就職を考え、日本のものを海外に発信している会社ないかを調べるうちに職人.comを見つけて京都で面接を受けて、そこで京都に何かを感じ、思い切って移り住みました。

京都に来て一度は就職。周りの環境に合わせようとして。家族や親戚に認めてもらいたいというのがあって就職しましたが、やっぱり自分でやりたいというのがあり、3カ月でやめさせていただくことに。自分にとって無理がない形でやりたい。そこで京都でもオーストラリアでやっていたように、道端で字を書き始めました。

資格を持ってるわけじゃないけれど、「書家」って名刺に入れてみてやり始めたんです。今の現状からすると、徐々に現実が、「書家」に距離が縮まってきているような気がします。

パッケージや看板を書いてほしいという出会いなどもあって、2年ぐらいの間に広がってきました。応援してくれる方々が徐々に増えて感謝してます。

いざやろうということで、一歩踏み出したところで、現実を追いつかせそうとして、最初は楽しいって感覚で。次に苦痛な部分が来て、でももうちょっとやってみる。するとその上にまだあったりして。今までは苦痛なところでやめていたのだけど、それ以上を見たいという気持ちが今は勝っています。

書道はひとつの手段、一番嬉しいのは自分が書いてもらったことに対して喜んでもらうこと。感覚的に他者に喜んでもらうことが嬉しい。

先日老人ホームでお母さんにプレゼントしたいということで、字を書かせていただきました。プレゼントしたことによって、よりよい関係になったりして「ありがとう」って言葉が出る。普段の生活ではあまり出ない言葉ですよね。本当はもともとつながっている関係なんだけど本音でしゃべれないことって多い。本音でしゃべったらすごくいい関係になれると思います。

僕は、自分が生きてたことでよりたくさんの人が幸せなってくれたら嬉しい。自分がこの世にいて役に立ってるということ。他者とのかかわりを持てないものには興味が湧かない。

僕にとって、自分が生きてる目的、役割を確認したいというその手段が書道なんです。「自分に素直に生きたい」 と、勇気を出して一歩踏み出したことが良かったんだと思います。

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関西大学の法学部を卒業してから弁護士になろうとしていましたが、なかなか受かりませんでした。難しい試験で8、9年ぐらいやってましたかね。

そうこうするうちに両親が病気で亡くなり、おばあちゃんも亡くなり、天涯孤独になってしまいました。

気力も萎えて、何したらいいかという感じになって。バブルが崩壊したばかりで良い仕事が見つかりません。大学の時に取った宅建の資格があったので、不動産会社を受けようとするも採用を控えている様子。

じゃあ自分でやるしかないということで、祖父が残してくれたこの家もあったのでそう決意しました。まずは小さい会社で働いて勉強させてもらおうと思い、賃貸に半年、売買に5~6年いました。

そこで分かったのはやっぱり自分でやってみないと結局分からないということです。その時その時の取引でいろんなことが起こる。それを結局は自分で解決していくしかない、マニュアル的に覚えて独立できるものではないと知りました。

6年修行し、このぐらいでええやろと思い、えいやーと平成9年独立。平成10年に結婚したこともあり、家内に助けられながら、ほそぼそとツテの紹介などで食いつなぎ、どん底に近い生活をしました。そうこうしているうちに町家ブームが来たんです。

左京区の大工さんが作業場に使っていた物件を、ヤフーの不動産に出したらすごい引き合いがありました。それが第1号ですかね。

次に京町家まちづくりセンターのメンバーに入れてくださいと売り込みに行きました。そして講師とかをさせてもらうことに。 財団法人の専門相談員になることで信用も付き、一度セミナーをすれば二、三人家主になってくれました。

また、京町家情報センターというNPOの発起人の一人になりました。そこを経由して、雑誌とかテレビとか出させていただくことに。これで広告ができてしまった。

奥さんが作ってくれたサイトも本当に役立ってます。今でも一番がサイトからのお問い合わせです。今は紹介のお客さんが多い。4割ぐらいは仲介のお客さんのご紹介。

現在は管理が50軒。更新だけやってるのもあります。それだけでつながってる家主さんもいて。管理報酬はそんなに多くはありませんが、安定して毎月入ってきます。それに賃貸の仲介、売買の仲介があります。売買の仲介は取引できると大きいですが、景気の変動に左右されるので、それだけをするのは今はかなりしんどいと思います。

次に町家に入る人を決めるのは、実は不動産屋です。なかには挨拶もしない、マンションみたいな感覚で借りる人もいて、そういう方には京都のことを最初にお伝えしています。

もちろん売上を上げないと食っていけないですが、それだけだと結局まちはどうなっていくのかなと思います。地域に溶け込める人に住んでもらいたい。だから人によってはこちらからお断りすることもあります。うちは物件情報は公表してなくて、実際にお会いしてから出させていただいてます。適度にクローズドでは行きたい。

これからもやっていきたいのはまちづくり。自分が仲介したところがカフェになったり美容室になったり。その変わりゆく様を見るとやりがいも責任も感じますね。

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「白練(しろねり)」では、友禅染めの技法の一つであるろうけつ染めを主にした染色法を用いてタペストリーや洋服などさまざまな商品を作っています。

以前は着物の工房で働いていたんですが、着物の技法や染めのよさをもっと多くの人に知ってもらいたいと思って、独立しました。

8年間着物を染める仕事をしていたんですが、日本の着物の技術は本当にすごいんです。たとえば染めのバリエーションというのは日本がぶっちぎりに多くて、百種類以上もある。

でも、着物は高価なものが多くて、なかなか普通の人が触れたり、楽しんだりできないのでそういうことはあまり知られていない。だから、着物の技法をいろいろなものに生かしてもっと多くの人に知ってもらいたいと思ったんです。

染めの最大の特徴は裏に向けても色が通っていることなんですが、この特徴を洋服などにも生かせたらなと考えています。まだ手探り状態なんですけど、普通の服地ではできないことをしたい。

着物というのは、1枚の布を巻きつけているだけですが、デザインがらせん状になっていて、柄の配置の妙で、奥行きや存在感を出している。

柄が動きと連動していて、すべての日本人の動作にデザインが対応している。一方、洋服はカッティングには凝っているけど、基本的に柄は繰り返ししかない。洋服にも着物のように柄の配置で遊ぶということを取り入れていきたいです。

今、衣服に関しては圧倒的に西洋に負けているけど、日本のもののよさってたくさんあると思います。洋服はカッティングして作るので、1着作るのにたくさん無駄な布ができてしまう。

その点、着物は1枚の布で作るから無駄が少ない。それから、天然染料。日本古来の天然染料には、化学染料にはないよさがたくさんあると思います。柿渋染めのジャケットを持っているんですけど、本当にカビが生えないんですよ。

家の湿気でほかの服にカビが生えたときも、そのジャケットだけカビが生えなかった。これからエコロジーの時代だし、こうした日本のもののよさをもっと知ってもらいたいですね。

そのためには、やっぱりものができる過程を知ってもらうことだと思います。今はものがどうやってできるかを知らずに消費していることが多いけど、美意識やセンスは美しいものができる過程を知ることで磨かれていくんじゃないかと思うんです。

だから、僕はお客さんと一緒にものを作っていきたい。こういうものを作ってほしいというお客さんとお互いに分かり合いながら、お客さんを育てたい。そして、こっちも育てられたい。やっぱり僕は職人なので「こんなんができたから着てみろ」っていうよりは、お客さんの要望を聞きたいし、それにどこまで応えられるかっていうのが好き。

そういうことの繰り返しで普遍的なものができるのかなと思います。お客さんのこういうものが欲しいっていう要望と、衝突して、もうこれしかないっていうものができる。その時まで頑張ります。